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相当に遅れてアイマスの千早病に陥ったPのSS公開ブログです。主に如月千早のSSになります。18禁・百合要素はなしです。
2011/12/09(金)20:10
前作は 千早とその仲間たち その10 律子編

一番前 千早とその仲間たち その1 真編

765プロ・事務所・事務室

千早「あら、亜美、真美、何を真剣に読んでいるの?」

亜美「あ、千早姉ちゃん!? あ、いや……その! な、なんでもないよ!」

真美「そ、そうだよ! 他人の秘密を暴いていたわけじゃないよ!!」

千早「え? こら!! 何をしていたのか、ちゃんと云わないと、本当に怒るわよ?」

亜美「も、もうすでにコワいんだけど、本当に怒るとさらにコワいんだよね……」

真美「ご、ごめんなさい、千早姉ちゃん、みんなの健康診断の結果を読んでたの……」

千早「健康診断? ああ、そういえばこのまえ、2人のお父さんが会社にいらっしゃって、やって行ったわよね? そうそう血を採られたわ。しかも2回も」

亜美「ひとつは血だけど、もうひとつは少しだけ細胞を取ったんだよ」

真美「《生検》っていって、細胞自体を調べるんだよ」

千早「さすがにお医者の娘さんね! あんなこと初めてだから驚いたわ」

亜美「うんうん、遺伝子検査、それに《生検》なんてフツーは絶対にやらないもん。検査費用、モノすごく高いからね」

真美「そうですな~、今回一人当たり40万円ってところですかね~、毎度あり~!」

千早「40万円!? び、びっくりだわ!!」

亜美「ううん、本当は5万くらいだよ。といっても、パパの知り合いの医療機関のテストケースも兼ねているから、安いんだけどね!」

真美「でも遺伝子を調べれば、ガンの可能性もわかるし、将来掛かりそうな病気もわかるんだー!」

千早「で、どうなの? け、結果は誰か悪い人がいた?」

亜美「いやいや、それはプライバシーに関係することだから!」

真美「そうそう、アミとマミは、自分の兄ちゃんのしか観てないよ!」

千早「本当に?」

亜美「……ごめんなさい。あと全アイドルとピヨちゃんのは見ました。全員、めちゃくちゃ健康でした」

真美「はい……あきれ返るほどに」

千早「わ、わたしのプロデューサーのは?」

亜美「見てないよ? このクリアケースに入っているけど」

真美「ええ? 千早姉ちゃん開けちゃうの?」

千早「わたしのプロデューサーだもの! わたしのデータだって見ていただくから問題ないわ」

亜美「いや……、コンプライアンス違反とかパワハラにつながるってパパが……って千早姉ちゃんには云っても無駄だよね」

真美「……で、千早の旦那の結果はいかに?」

千早「………………………………何が書いてあるか、さっぱりだわ、くっ!」

亜美「ど~れどれ……内臓系セーフ、血管系セーフ、がんセーフ!」

真美「疾患指数も……うん、軒並み低い! おめでとうございます! 80までは無理をしなきゃ大丈夫だよ!」

千早「でも……これぐらいの検査で、全てがわかるわけじゃないわよね」

亜美「うん、パパの話しでは、次世代の医療、《テーラーメイド医療》 、個別医療が始まってこそ、ホントーの予防や治療が受けれるって」

真美「ちなみに亜美と真美は、一ヶ月に一度パパに診察されているから《テーラーメイド医療》を受けているに等しいんだよ! うらやましい? 」

千早「確かに……タレントは《健康》も商品よね。『多額の保険金をタレントにかけた』っていうのを宣伝にしている事務所もあるものね……」

亜美「そうそう。ワレワレの仕事、とかくフキソクですからな~」

真美「保険金はムダじゃないよ! がんに対する重粒子線治療を受けたり、インプラント義歯を入れたと思ったとき、先進医療保険に入っていると、グッとお安くなりマスカラ~!」

千早「く、詳しいわね……。そうね、ここは思い切って色々入っておく必要はあるわね。幸い曲がヒットしているし、仕事を頑張る張り合いにもなるし!」

亜美「? 『保険に入ると頑張る張り合いになる』? 意味がわからないよ」

真美「それにさすがに千早姉ちゃんに保険とか、さすがに早いと思うよ? メッチャ健康だし!」

千早「いいえ、申し訳ないけど、早急に亜美真美のお父さんにお願いして、最新で最高の健康診断を受ける手はずと、お勧めの保険を教えてもらえるようにお願いできる?」

亜美「え~? ……うん、でも、トップアイドル様がそうおっしゃるなら、そうします、ハイ」

真美「千早姉ちゃんにはそれだけの価値は、確かにあるものね」

千早「? わたしに不健康な要素なんかないから。うちのプロデューサーの健康診断と保険をお願いしたいの! お金はいくらでも出すから」

亜美「えぇ~!!! 千早兄ちゃんなの? タレントがプロデューサーにそこまでするの?」

真美「ビックリだよ。そ、それに千早兄ちゃんの同意が必要になってくるよ?」

千早「同意は絶対に取り付けるから大丈夫! お金で買える健康ならいくらでも買うわ。あなた達はまだ若いからわからないでしょうけど、タレントとプロデューサーは一心同体なのよ?」

亜美真美「わ、わかいって云われても……」

千早「うん、そうだわ。プロデューサーの命はわたしの命でもあるんですもの! 命は一人にひとつなのよ!!」

亜美「…………こ、言葉と表情が重過ぎて、アミには反論できない……」

真美「マミも…………こんな15歳ってありなの?」

千早「80までか……じゃあわたしの力で100まで、そしたらわたしより先に逝くとかないものね。ウフフ」

亜美真美「千早姉ちゃんの兄ちゃん、あと70年間ガンバ……」

これも多分最終回です!

ちはやぼかろ001


医者・千早と亜美真美ナースを初め描いたのですが、つまらないのでちょっと変えようとしたら、何故かボカロ風に。まあいいや。

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2011/11/21(月)20:20
前作は Pと千早、アイドルは見ていた! 美希編 ランクA 10

最初は Pと千早、アイドルは見ていた! あずさ編 ランクE 01


765プロ新社屋・地下駐車場・夜

貴音P「事務所到着。お疲れ様でした……」

貴音「 お疲れ様でございます。プロデューサー殿もお疲れ様でした。……といっても、実際デパートのイベントで2曲歌っただけですから、疲れてはいませんが」

貴音P「俺も別に仕事は疲れてないんだけど……周囲の視線がキツ過ぎて。『若造が高級車フーガ ハイブリッドなんぞ乗り回しやがって! しかも絶世の美少女を連れて、何様だ!!』って視線、もう……誤解を解いて回りたい」

貴音「 まあ、しかし社用車なのですから、どうしようもないですね」

貴音P「今日のイベント主催者も車見て、ビックリしてたな~。社長、税金対策だからって、社用車全部を高級車ってやりすぎだよ……」

貴音「 しかし、765プロは春香、美希もランクA……如月千早にいたっては、ついにランクSですから、高木殿が酔狂になるのも無理からぬことです」

貴音P「……本当にノリに乗るって、こんなに凄いことだったんだな。貴音を隣に乗せているだけで動揺している場合じゃないな」

貴音「 事務所も一等地に移動し……わたくしも外様ですが一刻も早く、戦力になるよう精進する所存です」

貴音P「うん! そういえばもう納車されているんだよな、765プロ専用イベントカー! 10tトラックの移動ステージ車! 荷台のウイングを開けば、広いステージ、高音域スピーカー、多彩な照明をお客に提供! 開くカバーにも大型LEDビジョン付!」

貴音「 イベントエリアに到着し、すぐにコンサートが開ける、まさにアイドルのための夢の車! 765プロにとって『鬼に金棒』でございますね。一昨日、実際に拝見しました。『素晴らしい!』の一言でした。わたくしも早くそこで歌いたいと思います!」

貴音P「へへへへ、実は本当に一番最初に貴音が使えそうなんだ。日曜日に試運転するんだけど、空いているのはスケジュール的に貴音だけなんだ。いまイベント許可の申請中なんだぜ」

貴音「 まあ!! ……嬉しいと思うと同時に、気が引けます。ここはやはり如月千早が一番最初に使うべきかと……」

貴音P「いやいや、千早ちゃんは今、夢中になっている車があるから無理だよ。あ、噂をすれば影だ。今は駐車場に入ってきたアレがそうだよ」

貴音「 え? あの車……先週からこの駐車場で見かけるようになったオンボロ……失礼、年季の入った小型トラックではありませんか!」

貴音P「千早ちゃんのプロデューサーが自腹で5ヶ月前に購入し、知り合いに改造してもらった自作イベントカーだよ」

貴音「 え、なぜ? あんな車を?」

貴音P「正直……若気の至りだろうね。どうも千早ちゃんのプロデューサー、千早ちゃんが『アイドル辞めて歌手に専念する』って言い出すと思っていたそうだ」

貴音「 それは、わかる気がします」

貴音P「彼は千早ちゃんが『アイドル辞めても、歌える場所を』って考えたんだって。また千早ちゃんが『歌いながら旅をしたい』って云ったのを真に受けて、アレを作ってしまったそうだ」

貴音「 はぁや! それがアイドル続行で――大成したとなると、あれは無用の長物……」

貴音P「そ、そこまでハッキリ云うな! まあ……今更ランクSがアレでイベントはないだろうけどね」

地下駐車場の2人

貴音「 あ、帽子と眼鏡で変装した如月千早とプロデューサーが降りてきましたね! 如月千早、上機嫌でオンボロ……ビンテージカーを愛でて――いいえ、運転していたプロデューサーにも同様の熱い視線をむけていますね」

貴音P「それはそれはお気に入りのようだよ。成功するしないに関係なく、プロデューサーが自腹で作ってくれたイベントカーだからね。千早ちゃん、アレばっかり乗っているから、千早ちゃん用の社用車がいつも別の人が使っているんだ。……俺たちのことだけど」

貴音「 さようですか……。2人の絆があってこそのランクS。何とも心が温まるお話しでございますね……」

貴音P「確かに――2人を観ていると、胸の奥がカユくなってくるような……不思議な気持ちになる」

貴音「 わたくしは、心臓の近くに甘美で震えるような、快い鼓動を覚えます。絶対の信頼と愛情あるプロデュース、乙女にとって、正に《理想》です……」

貴音P「わかっているって――俺も後に続くよ。俺も同じようになる!」

貴音「 え? わたくしの全面的な信頼を勝ち得るということですか?」

貴音P「そんな高望みはしないよ。でもアイドルのプロデュースだけは、命を懸けて完璧に果たすよ!」

貴音「 まあ……高望みせぬようでは、わたくしのプロデュース、いささか心もとなく思いますよ?」

貴音P「そ、そうか――やっぱり『愛』が『力』……いやいや、ともかく目指せランクSだ!」

貴音「 はい!! あ、2人がエレベーターに向かいます。同乗して、互いに必要に思えるノウハウ、是非に尋ねましょう!」

貴音P「お、おう! ……『成功するノウハウ』の間違いだよね?」

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多分、これでこのシリーズ最終回。

動画のために、せっせと手書きの絵の修行……使えるめどはまだ。誰か錦織タッチで魔王エンジェル描ける人いませんか~。
2011/11/18(金)20:40
前作 ゲストがコーチ! 千早のお勉強会10 貴音編

一番最初が ゲストがコーチ! 千早のお勉強会01 伊織編

765プロ・事務所・会議室

「明日のバラエティ番組でデザート創作チャレンジをすることになった。そこでスイーツに精通した春香ちゃんに来てもらいました!」

春香「はわぁあぃ……」

千早「春香? 春香……目が飛んでいるわよ」

「春香ちゃん、なんか……ずっとこんな感じなんだよな。ラストコンサート終えたばかりだからね。うちは今月に入って、ラストコンサートラッシュなんだよね」

千早「そうでしたね。でも現役、継続なんですよね、春香!」

春香「えへへへへぇ~♪」

千早「あ、笑った、斜め上を向いて。しかもホッペをピンクにして」

「千早が来週ラストコンサートだから、色々聴こうと思ったんだけど……春香ちゃん、心ここにあらずなんだよね」

春香「……うっ、う~ぅ――――ぐぅ~ん、うわぁ…………」

「今度は顔が真っ青に……取りあえず、ケーキをつくる材料一式そろえておいたんだけど……は・る・か、ちゃん?」

春香「は、ケーキ……あ! 千早ちゃんにケーキ作りの指導、でしたね!」

千早「え、ええ。お願い――できるかしら?」

春香「任せて! えっとプロデューサーさんが惚れ直しちゃうって感じのケーキね?」

千早「え、えぇ? そ、そうね、そういうのいいわね」

「ち、違うよ、番組内で作るケーキ! ケーキ作りをコーチして欲しいんだ。手軽で、ちょっと真似したくなるポイントとかあると、いいんだけど」

春香「……あ! そうでした、完全に勘違いしてました! ワチャー」

千早「春香、完全に上の空って感じね」

「ともかく、春香ちゃん、指導お願いします。お菓子作りに男がいてもしょうがないので、一時間したら顔を出すよ」

春香「はぁ~いぃ! …………ぁはぁ~あ。」

千早「もう……云ったそばからテンション変えて。春香、話は後で聴いてあげるから、取りあえず、ケーキの指導お願いするわ」

ブログ用キッチン

30分後

千早「春香……これ、何人分なの?」

春香「…………へっ?」

千早「ずっと手を動かしているけど……あと、台所・冷蔵庫の材料、全部使っているわよね?」

春香「ハっ!? あわわわっ!! 本当だわ! 知らないうちに、8個くらい作れることになっちゃっている~!!」

千早「やっぱり無意識でやっていたのね。もう――作るだけ作って、事務所全体全員で処分するしかないわね」

春香「あわわわっ、ゴメンナサイ……」

千早「で、このケーキの特徴は何かしら?」

春香「えっとね、土台となるスポンジケーキにも、塩バターを使いました~。最近のトレンドで、塩バター、塩生キャラメルを使ったりします。あと、甘味料にメイプルシロップを使ったり、盛り付けるフルーツに、ライチ、ドラゴンフルーツなんかのアジアンフルーツを使うと、今風度が増すと思うわ!」

千早「ア、アジアンフルーツね……メモメモ」

春香「あ、千早ちゃん、積極的だね!」

千早「ま、まあ………誕生日につくってあげたいから。で、春香、どのへんが男性受けするところなのかしら?」

春香「え? ……『男性受け』って何?」

千早「も、もう………春香、今日、ビックリするぐらい、滅茶苦茶よ? 理由、聴くわ」

春香「あ、ごめんなさい。り……理由は、その、ラストコンサートで、プロデューサーに、お別れをしたから、かな?」

千早「一旦春香のプロデューサーとはお別れなのよね? ……なんで、幸せそうに微笑んでいるの?」

春香「えっへへへ♪ だって、お別れのとき、『20歳になって、トップアイドルになって引退するまで待ってくれますか?』って告白したら、OKもらったんだもん~♪」

千早「え? えええぇぇええええぇっ!!! そ、それは『おめでとう』っていっていいわよね!? おめでとう、春香!」

春香「ありがとう、千早ちゃん! うふふふ……でも――」

千早「あ、またテンションが急速に下がって。何かあったの?」

春香「わたし、すっごく勇気を出して、すっごくいい結果をもらって、最高な気分なんだけど――半分、『失敗した』って気づいて、落ち込んできちゃうのよね……」

千早「『失敗した』って、何がなの?」

春香「告白のこと、真と雪歩に自慢したのね。そしたら……」

千早「ああ、あの二人もラストコンサート 、終えたばかりよね」

春香「うん。そしたら2人とも、『担当プロデューサーとお付き合い』する承諾を得たって云うのよね……」

千早「ええ!? 真と萩原さんが!?」

春香「うん!! 二人とも交際の申し込みを成功させているのよ!! ズルくない? わたし、20歳なんていって……幸せなのに、同時にものすごく損した気分なのよね……」

千早「そ…そっ、そそぉ!! そ・そ!」

春香「『そ・そ・そ』って、千早ちゃん、何を云いたいの?」

千早「それってラストコンサートの後、一発勝負ってことなのね!! 一回の勝負で決まるのね!」

春香「う・うぅう~ん……失敗したわたしから何を云うべきなんだろう?」

千早「そうよね……とにかく春香の轍は踏まないようにしないと。そうね……ど、どうしよう」

春香「千早ちゃんも、プロデューサーさんの担当継続希望なんでしょう?」

千早「当然でしょう? 難しいわたしと手の合う人と出会う可能性なんか、恐ろしく低いってわかっているもの! それにしても……ブツブツブツ――」

春香「ち、千早ちゃん、長考に入る前に、聞いて! わたしのプロデューサーと千早ちゃんもプロデューサーさん、仲がいいじゃない? で、千早ちゃんに協力して欲しいんだけど!!」

千早「『協力』? 悪いけど、それどころじゃないんだけど……ラストコンサートでプロデューサーに何をどうお願いすべきか、考えなきゃ……じ、時間がないもの!」 

春香「え~ぇ? 千早ちゃん、協力してよぉ! 千早ちゃんのプロデューサーさんから、わたしのプロデューサーに『4年後じゃなく、1年後でどうだ?』って探りを入れて欲しいの!」

千早「はぁ!? 難易度、高すぎるわよ! 無理、無理すぎ!」

春香「そ、そんなこといわないで! わたし、千早ちゃんにも協力するわ! ラストコンサートでどんなことを云ったらいいか、一緒に考えるわ。セリフとかも考えるから!」

千早「……う~ん。正直頼りないけど」

春香「で、ズバリ千早ちゃんのお願いは?」

千早「え、えっと……そのわたしは別に『お付き合いしたい』とかはいいわ。こ、恋人とか考えてないし」

春香「あ、そうなんだ。ちょっと意外」

千早「た、ただこれからも、わたしだけを見ていて欲しいし、わたしを一番近いところに感じて欲しいってだけよ。そ、それもできれば一生……ずっと――」

春香「……………………………………」

千早「い、言っていること、わかる?」

春香「はい。もうわかりすぎるぐらい」

千早「と、とにかくケーキは作ってしまいましょう。作りながら考えましょう」

春香「う、うん、手を動かしながら考えましょう。……まったくどっちが難易度高いんだか」

千早「春香、何? ………『わたしの翼になってください』――違うわね。『翼は2つで一つなんですよ!』……う~ん」

30分後

「お~い、お二人さん、ケーキできたか~? ……ええぇええ!? なんで大きなウェディングケーキを作ってんの!?」


春香千早「ハッ、いつの間に!?」


この企画もこれで最終回! ふう。


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2011/08/03(水)12:34
前作 千早のiDOLガールズトーク04

一番最初 千早のiDOLガールズトーク01

765プロ・事務所

春香「千早ちゃーん、真、ちょっといい? 本読みに付き合って欲しいんだけど」

「うん、いいよ。千早もボクもあとは帰るだけだから」

千早「本読みってテレビのドラマのよね?」

「春香のドラマ、話題だよね。『優等生かと思ったら、実は腹黒いキャラ! お色気で男子生徒を翻弄する』んだよね。クラスでも熱心に観ている人がいるよ!」

春香「好評は嬉しいけど、普段絶対言わないセリフばかりだから苦労するのよね~」

千早「ふふ、そんなこといって、読めない漢字があるだけじゃないの?」

春香「今回ばかりは千早ちゃんの方が、『よくわからなくなる確率』が高いわよ? え~と『JK』ってわかる?」

千早「『JK』? ああ、そのくらいは知っているわ。馬鹿にしないで」

「そうなの、千早。ボク実は一ヶ月前に知ったばかりだよ!」

千早「声楽家のジェームズ・キングのことでしょう? アメリカ屈指のヘルデンテノールを知らない方がおかしいわよ!」

春香「も・もう、そんなことだろうと思ったわ。『JK』は『女子高校生』って意味よ。日本語は刻々と変化を遂げているのを、インターネットが出来ない千早ちゃんは知らないでしょう?」

「そうなんだよね、春香のその役! 何か知らない言葉をジャカジャカ使ってきて面白いんだよ! 優等生の仮面を取ると、『日本語でおk』とか『ググれカス』とかヘンテコなこと云うんだよね~」

春香「面白いは面白いんだけど、肝心のわたしがわからない言葉が多くて」

千早「例えば?」

春香「わたしの役の子がすぐに、子分の男子生徒に、『タヒれ!』っていうんだけどわかる?」

「『タヒれ!』?いやまったくわからない。もしかして『タヒチ』が関係する?」

千早「……わたしもさっぱりだわ」

春香「これがなんと『死ね』って意味ですって。ひどいわよね」

「ああ、『タヒ』が『死』なんだ……。頭にくるな~! 人に簡単に死ねとかいう人は大嫌いだ!」

千早「知らないで使ってしまったら大ごとね!? やっぱりネットの言葉は抵抗があるわ」

「でもさ、『リア充』とかは、素直に『うまいな~』とか思うしね」

春香「あ、あれネット用語なんだ! あ、それで台本でわからない言葉出てくるから、教えて欲しいんだけど。普段は小鳥さんに聞くんだけど、早い夏休みだっていうから」

「律子は二度同じこと聞くと怒るしね。よし、一緒に考えよう!」

ブログネットスラング

春香「えっと、まずは『俺の嫁』がわからないの。台本には『俺の嫁失格』『あいつは俺の嫁になれる』って出てくるの」

千早「女性が『俺の嫁』って云うの変よね?」

「あ!! これは言葉を抜いた言葉じゃないかな? 本当は『俺の空気を読め』なんだと思う!」

春香「なるほど……『俺の嫁』は『周りの気遣いが出来る人』か……なんかわかるわ」

千早「わたしも正解だと思うわ。わたし、プロデューサーに『空気読んで』って云われることが多いから」

春香「次は……『薄い本ができる』。使い方は『薄い本ができる展開だな!』、『わたしで薄い本作る気だな!』っていうの」

千早「『薄い本』? 何の本のことかしら。もの凄く有名な何かよね?」

「わざわざ『薄い』って限定しているのに意味があるんだよね……」

千早「薄いっていうとパンフレットみたいな感じかしら。『わたしでパンフレットを作る気』ってことだと――『色々な体験が詰まった』とか?」

春香「ああ、悪くないと思うわ。『思い出のアルバム』ほどではない『体験を作る』って推理できるわね。だって、『薄い本……』ってセリフの後で男子生徒が全員照れるんですもん!」

「『思い出のパンフレット作り』か~。なんか『甘酸っぱい青春』って感じだよね~!」

春香「次は『ブヒる』ね。えっとドラマでは男子生徒に『わたしでブヒるの許可してあげる』ってセリフがあるわ」

「さっきの『タヒる』に似てるけど、漢字にはならないね」

春香「多分ブタに関係あるんじゃないかしら。『ブヒ』って豚の鳴き声ぽいもの」

千早「ああ、何か豚に引っかけた面白い言葉があったわよね。『豚が勝ったら馬も勝つ』みたいな……」

「あ、『トンカツ喰って美味かった』ね。大事な試合の前にトンカツ食べたりするんだよね。え? 千早、何震えているの? あ――笑っているんだ……あ、ダジャレだもんね」

春香「わたしの推理なんだけど、聞いてくれる? 不満を言うとき『ブーブーいう』って云うじゃない? でも否定する、『否』が文字が入って『ブ否』なんじゃないかと思うの」

「『ブ否』……不満を言う逆、つまり『好きになっていい』って意味になるのか。うんうん、何か違和感ないよ! 使い方から云っても多分そうじゃない?」

春香「ともかく、だいたいわからないところがわかったわ。2人ともありがとう! ……千早ちゃん、まだ笑っているの?」

千早「……ハァハァ――でもこういう言葉って、確かに時代性を感じるわよね。わたしなんかこういうのに無縁だから、プロデューサーに使ったら驚くでしょうね」

「ボクもちょっといいかな~、って思えてきた。時代の最先端って感じるもの」

春香「確かにネットとかに疎い千早ちゃんと真が使ったら、2人のプロデューサーさんはビックリすること確実ね!」

千早「よし! 明日、使って見るわ。え~と『わたしはプロデューサーに俺の嫁って呼ばれる人になるから、一緒に薄い本のような仲になりましょう! プロデューサーは是非わたしをブヒってくださいね』って感じかしら!」

「よっし! ボクも云って、ビックリさせよう!」

春香「じゃあ、わたしも云うから、誰が一番ビックリしたか報告し合いましょうよ!」

千早「賛成!」

……意味がわからない人は、こちらに飛んでください。 *俺の嫁 *薄い本 *ブヒる


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2011/07/18(月)12:23
前作 千早と食べよう! 季節の旬09 牡蛎・ホタテ編

一番最初 千早と食べよう! 季節の旬01 あんこう編

新社屋765プロ・社内・夕方・日曜日

「千早、まだいるのか?」

千早「あ、はい、もうiPodの移し替え終わりました。うん、リストの管理も完璧です」

「何も会社で毎回やらなくても良いのに。家にもあるだろう?」

千早「……その――わたしのパソコンですが、音楽ソフトをダウンロードしていて、何だか色々英語でメッセージが出てきたので、全部に《Yes》って選んでいたら、突然、動かなくなってしまって……」

「なんでも《Yes》はダメだよ! でも動かなくなるっていうのがおかしいな。HDの残り容量は?」

千早「《残り容量》? 《残り容量》とは何です?」

「……わかった。問題は何か色々ありそうだから、今度俺が直すよ。ともかく俺、もうちょっと秋のコンサートの資料作りがあるからな!」

千早「夕飯ぐらいご一緒しませんか? ほら前に言っていた、そこの1500円のハンバーガー屋さんに!」

「お肉はちょっといいや。またの機会にしよう。じゃあ仕事に戻るね」

千早「ちなみに、冷蔵庫にゴロンと置いている一升瓶は、プロデューサーのですか?」

「え? あ、あ、あれか……あれは音無さんのだよ」

千早「ですよね。冷やしているときは、音無さん、だいたい会社で飲むときなんですよね。まさかプロデューサーと一緒に飲む気ですか?」

「え? ……は、はい、一緒に飲む約束になってます。でもサシじゃないよ? もうすぐ亜美真美のプロデューサーも来るから!」

千早「会社で示し合わせて飲み会ですか? 呆れました。プロデューサー、お給料上がったんですよね。そんな節約せずに、お店で飲めばよろしいじゃないですか」

「いや、今日は特別なんだよ。亜美真美のプロデューサーが、アジを釣りに行ってね! それをここでさばいて、それを日本酒でいただこうっていう算段なんだ!! ――あ、云っちゃった……」

千早「ム~!! なんで秘密になさるんです? わたしはのけ者ですか?」

「そ、そうじゃないよ。お酒がメインだからさ。未成年の子がいたら、ほら……」

千早「お酌ぐらいします! 子供扱いは何だか良くないと思いますよ?」

「そ、そうだな。でもあんまりベロベロに酔っている俺の姿とか、見せたくないんだけどな~」

千早「ああ、なるほど。とことん飲むときにはお子様は邪魔というわけですね。くっ! でも大丈夫です。趣旨はわかりました」

「あ、ありがとう、さすが分別ある千早だ! 今度一緒に食べよう!」

千早「? わたしが帰ると思っているようですけど、違いますよ。わたし、給仕に専念します。みんなが気持ちよく飲み、食べられるように、色々手伝います!」

「えええ――トップアイドルにそういうことさせるのは、どうかと」

千早「のけ者の方がわたしはイヤなんです!! まったく、もっとわたしを都合良く使ってください……」

亜美「はい! 亜美一番~!!」

真美「真美、2位~!! んっふっふ~!!」

亜美真美P「………ぜぃぜぃぜぃ3位……っていうか突然駆けっこなんて、無理だし! クーラーボックス満載だし……」

「え、亜美真美も一緒だったの?」

亜美真美P「はい、途中から。2人のお父さんの恩師が急に危篤とかで――遊びに行く予定が潰れたというので、自分が誘ったんッス」

亜美「亜美、すっごく沢山釣ったんだよ!! 爆釣~ってやつ?」

真美「真美は海で泳いだんだ!! やっぱ海っていいな~! 3人でスイカ割りもしたんだ~!!」

千早「あら! 亜美は焼けてないのに、真美は真っ黒! 完全に区別がつくわ」

亜美真美P「2人でジャンケンして焼ける方を決めたみたいスよ。……俺は両方とも、焼いて欲しくなかったんスけどね……」

「ご、ご苦労様――この2人を連れて、海で釣りしてくるなんて、凄い体力使ったな~」

亜美真美P「大したことじゃないッスよ。年齢とか、タレントとか関係なく、大切な仲間ですから。自分、自由に遊ばせる時間も作れてないから……」

千早「………」

「な、なんだよ、千早、その俺に対する批判的な目は。別にノケ者にしようとかしてないし!」

亜美「ほらほら、2人とも痴話喧嘩はやめて、エプロンつけて!」

真美「そうそう! 夫婦喧嘩は犬も食わない! でもアジは早く食べようー!」

千早「な、何を言い出すの、亜美と真美は!」

亜美真美P「マアジ20匹!! マルアジは夏場はマズいのでその場で離したッス。氷でしめているので美味しいッスよ~!」

「よっ、待ってました!! さっそく取りかかろう!」

10分後

千早「器用におろしますね~!」

亜美真美P「ははは、うち貧乏でしたんで、自分が釣った魚が夕食になることが多かったんス。夕飯を早く食べたくて、おろすのは自分でやったんス――。アジは簡単ッスよ。エラ、うろこ、ハラワタ、ゼイゴって順番で取るッス」

亜美「千早お姉ちゃん、今日はアジフライは作らないから、食べたかったら3匹くらい、氷を入れて持って帰ったら?」

真美「今日はお刺身と、《りゅうきゅう》と《冷や汁》にするんだって!」

千早「《りゅうきゅう》と《冷や汁》? 聴いたことがないわ……」

「《りゅうきゅう》は大分県の料理で、《冷や汁》は宮崎の料理だとさ」

亜美真美P「自分、九州の出なんで――まずは《りゅうきゅう》、亜美と真美、お願いするッス!」

千早「え? 2人が作るの?」

亜美「えっへん、亜美シェフにお任せアレ~! まずは小ネギを切ります! そんでゴマをすります! すりすり~♪」

真美「おっほん! その隙に真美板長が、秘密のタレを作りま~す! 麺汁、お酒、チューブのショウガを8センチ、卵の黄身だけ2つ――グリグリグリっと混ぜます!」

亜美真美「その全部を、兄ちゃんが切った刺身に掛けて、完成~! しばらくタレが染みるのを、冷蔵庫に入れて待ちます~!」

亜美真美P「次は《冷や汁》。アジを焼いて、身を出して、ゴマとムギ味噌を混ぜて、すり鉢で一緒にスるッス。で市販の出汁と合わせて、輪切りにしたキュウリとシソを混ぜて、完成――これを凍る寸前まで容器ごと冷やッスす。」

千早「まあ、不思議な料理ですね……」

亜美真美P「本当はもう少し行程があるんですけど、釣りたてのアジなんで、これで充分美味しいッス!」

「おし、お米があと30分で炊けるぞ~!」

小鳥「こんばんは~、お待たせ~!! さあ、料理、手伝いますよ~!」

千早亜美真美P亜美真美「出来るの見計らってきたでしょう?」

30分後

ブログあじ

小鳥「さあさあ、子供にはご飯! 大人は日本酒を一杯いきましょう!」

亜美真美P「いただきます! ゴクっ! 美味しい!」

小鳥「旨い!! 富久錦 辛口純米酒 『郷味深辛』!! 安いのに美味いわ~!!」

亜美「亜美は《りゅうきゅう》とごは~ん!」

真美「真美は《冷や汁》をご飯に掛ける~!」

千早「で、では《りゅうきゅう》を掛けたごはんに、お茶を掛け……いただきます。ん! お、美味しいです!!」

「そうだろう? 知らないと《ゲテモノ》っぽいイメージがあるけど、両方とも味はアッサリしてコクがあって、喉をすすっと通って!」

亜美「美味しいなんてもんじゃないよ~! 超超超美味しいよ! 亜美が釣ったマアジ最強!!」

真美「あ~、真美も釣れば良かった! でも《冷や汁》、冷たいから超食べやすいよ! お魚のイヤな味がしない!」

亜美真美P「自分的には《りゅうきゅう》と《冷や汁》はただの郷土料理にしておくのは、惜しいと思っています。夏バテしたときに最強ですから」

千早「同意します! これは美味しすぎる夏バテ防止料理です!」

小鳥「あいた、参った! 全部世界最強クラスで美味しい――酒に合うから飲み過ぎるし、ごはんに合うから食べ過ぎちゃうわ~!」

千早亜美真美P亜美真美「自重してください!」

「わかったろ、千早。お店で味合うより、遥かに贅沢なんだよ。本当に極楽だな~」

千早「ムッ! こんなに楽しくて美味しいのに、プロデューサーはわたしを帰そうとしたんですよ? その罪は一生消えませんから!」

「一生…………じ、地獄だ……」

亜美真美P「大丈夫っスよ。うちも亜美真美が『2人が16歳になるまでに、どっちと結婚するか決めてね』とか、怖いこと云うけど、本気にしちゃダメッすよ。逆に楽しまないと!」

亜美「アーッ、あんなこと云ってるよ、真美?」

真美「いいよー。『予告はしといた』っていうもん。後悔するのは向こうだし!」

千早「あ、わたしもそういうこと、隙を見てサラって云っておこうかしら!」

亜美真美「云っちゃえ云っちゃえ☆」

「あ、あれ、この冷酒、冷やし過ぎじゃない? 体震えてきた……」

亜美真美P「自分も何か、寒くなってきました……。か、燗にしましょうか?」

小鳥「う~ん、バカップルを肴にしても、酒がススむな~! 旨い!!」

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2011/06/24(金)18:17
前作は ラプソディ・イン・ブルーバード・第二話

初めは ラプソディ・イン・ブルーバード・第一話

 千早は安全ピンでドレスの垂みを直し、鏡の前で再調整した。
 大勢の人間が、千早に好奇の目を向けてくることはわかったが――次第にどうでもよくなってきた。
 あいかわらず胸がペッタンコだ――と思われても、受け流す余裕も千早にはある。
 たった一人が、自分がどんなことになっても、絶対に愛してくれるという確信が、千早はある。
 だから、通販でいい加減に買った、サイズの合わないパーティドレスを着て出かけても、大事ではないと思えたのだ。


 行き先は水瀬邸。
 765プロを8ヶ月前に退社した、アイドル水瀬伊織の自宅で開かれる、パーティに参加するためだった。
 千早は自分の恋人との約束、旧友との交流を復活させるために、行動を起していたのである。
 メールで近況を尋ねると、伊織は千早をパーティに招いたのだった。
 自宅で、水瀬商事の飲料部門のブランド、《WEABOO》の記念パーティに招待されたのである。
 大学生の伊織は、現在、水瀬商事で働きながらも、再来月にはロンドンの大学に留学する予定となっていた。
 伊織は自分の元プロデューサーと、食品ブランド《WEABOO》を立ちあげ、売り込みに余念がなかった。


 パーティは水瀬家の2階建て社交用専用建築物で、行なわれることになっていた。
 全体がロココ調に作られた建物は、聖堂のようにも見えたのを、千早は思い出す。
 直に日が沈もうとしていたときに、千早はタクシーで水瀬家の正門前で降り、インターフォンを鳴らすと、懐かしい人物が出迎えをはたした。
 水瀬家の執事の新堂が、恭しくも千早を向い入れ、パーティ会場に通された。
 会場ではすでに、オシャレに着飾った若い男女が、優雅にお酒を嗜んでいた。
 いかにもクラシック音楽が似合いそうな建物だったが、パーティ用のLEDなどの電飾が至る所に飾られ、音楽もハウス系が流れており、若者中心の催しであることが千早にはわかった。
 一階にはビリアード台、ダーツやバーカウンターがあるパブ風になっており、二階が小さなコンサートホールになっていることを、千早は知っていた。
 千早は、青春を謳歌する若者達の間をうつむき加減で、足早に歩く。
 直に21歳になるという千早であったが、明け透けに若さを楽しもうとする人間達に距離を覚えていたのだ。
 人種も違うし、その無邪気さは自分にはもうないようにしか思えない。
 2階に上がった途端に、千早は伊織と出会った。
 伊織は手足がすらりと伸び、すっかり女性らしい体型となっていた、

「千早!! 会いたかったわ!」

 銀のパーティドレスを着た伊織が、大きな声を挙げた。そして飲み物を給仕に預けてすぐに、両手を広げて千早に飛びついていく。
 千早は一瞬たじろいだが、強く伊織を抱きしめる。
 周囲の「伝説のアイドルが、旧友との再会を喜ぶ」という期待に屈した形だった。

「お久しぶりだわ。水瀬さんもお代わりなく――」

 いや、違った。伊織はずいぶんとグラマラスになっていた。
 恐らくは85から86……パットじゃないことが千早にはよくわかった。
 くっ……千早の刹那の殺気に、伊織は困惑するが、すぐに案内に移る。

「本当によかったわ、千早に会えて。そろそろ留学やら新製品キャンペーンやらで、バタバタしそうだったから」

「会うまでもったいぶって、本当にごめんなさい。彼から色々聴いてるわよね」

「ええ! ……しかし随分ガタガタなドレスね。サイズも微妙だし。通販で5980円くらいの感じの」

「当たりよ! さ、さすがは商売人ね!」

「ありがとう。ドレスは死ぬほど持っているでしょう? どうしたのよ」

「……ええ。日本に帰った時に収納ケースに突っ込んだままだから。彼が防虫剤を入れてくれたような……そうじゃないような」

「ハハハ、怖くて確かめられないのね。プラダのドレスなんかが、本当に『箪笥の肥やし』になってるのね」

 千早は伊織がまるで仰天していないので、自分の怠惰な状況がそれなりに正確に伝わっているのがわかり、ホッとした。
 千早はふと気がつくと、2人は狭い螺旋階段を登っていた。
 伊織は千早の手を優しく引いていう。

「取り囲まれるのは嫌でしょう? 真のVIPルームに案内するわ。ここは水瀬家の人間だけが使う場所なの。パーティーの最中に、株取引したり、休んだするためのね」

 二階層まで上がった先に、四畳半サイズの部屋があった。
 伊織がカードキーで扉を開く。ソファ、パソコン付きデスク、冷蔵庫があった。
 扉を閉め、伊織が部屋のスイッチを押すと、たちまち防音に変わる。
 伊織は冷蔵庫から、真っ赤なアルミボトルを取り出す。

「中身はラムネよ」

 そのアルミボトルには、アニメ風な美少女が書かれ、「ニンジャ」とカタカナ表記されたロゴがあった。
 千早が飲むと、確かにラムネの味だった。
 伊織はボトルを眺める千早にニッコリ微笑んでいう。

「わたしと彼が世界で売り込んでいる製品なの。ジャパンカルチャーを押し出したブランドなのよ。『アニメの中であのキャラクター達が飲んでいた味が味わえます』ってね! 日本しかないジュース、ラムネ、メロンソーダ、サイダーなんかがあるの。もうニューヨークとパリ、台湾で売り始めていて、売り上げは上々なのよ!」

「ふ~ん。売れるでしょうね。海外のアーティストは、呆れるほど日本のアニメを見ているもの」

「そうなのよ! わたしの彼が発案して、ここまで来たけど、大きな事業として展開できる自信もあるの! ちなみに今日のパーティの客は、日本人でありながら、海外から大きなアクセスを受けている、英文でブログを書いている人気ブロガーさん達なのよ!」

「ふうん。でも……ひとつ気になったことがあるわ」

「何? 千早の助言、是非欲しいわ」

「彼って、あの海外旅行よく一緒にしていたプロデューサーさんよね?」

 千早の言葉に、伊織はムッとしながらも赤くなる。

「気になるってそこ? ――も、もう。答えはイエスよ。今は婚約中――来年には結婚するわ」

「え!? そうなの? わたしの他に『婚約』しているアイドルがいたのが、ビックリだわ……」

 目を丸くする千早に、伊織は呆れた顔をして見せる。

「それはあんたが引きこもってたからでしょ? わたしはみんなの状況を、逐一チェックしてるもの」

「お、おっしゃる通りだわ。えっとおめでとうございます! よね」

「ありがとう! 千早も近いのよね。お互い、仕事で付き合った人間と結婚って、パッとしないわよね? でもわたしは最高に幸せだわ。彼がプロデューサー業より、『水瀬家の人間として生きる』って決断してくれたことが、ランクAになった時より嬉しかったの! にひひ♪」

 そういって眼を輝かせる伊織が、千早にはとても愛らしく、美しく映った。
 伊織も幸せそうだったが、旦那さんも幸せだろうな、と千早は想像する。
 千早はいずれは自分も、彼に凄く幸せだと思ってもらえるようになろうと、決心する。
 伊織はまだ恋愛の甘美な喜びを口にしそうだった――が、不意にハッし、表情を引き締めて、携帯電話を手にする。

「雪歩、千早は準備OKよ!」

 千早が雪歩の名前に唖然としていると、突如、視界の下部で複数のライトが灯る。
 同時に伊織が防音のスイッチを切る。
 すると伊織・千早のいる部屋の斜め右下にあるステージの緞帳があがり、萩原雪歩が姿を見せた。
 引き締められた22歳の肢体は、どこか清楚な顔貌と見事なコントラスを形成し、蠱惑的な妖艶さを醸し出していた。
 肌の露出の多い衣装を着て、メイクもバッチリと施した雪歩が、マイクを口に近づける。
 雪歩は挑戦的な目つきで、高く激しいシャウトを放つ。
 サプライズな仕掛けに、ホールのパーティー参加者達が、激しく熱狂的な歓声を挙げ始める。

 うおおおおぉぉ~!!

 ブレも遊びもないパフォーマンスに、本気のどよめきが起こる。
 千早にしても、雪歩がアップを済ませ、完璧な調整を経て、あそこにいるのがわかった。
 雪歩は新曲「アシッドLove」を、観るものに叩きつけるように、扇情的に見舞う。
 見えないパートナーを相手に、熱情的に足を絡め、腰をエロチックに振るう仕草を、雪歩はしてみせた。
 情感をねじ伏せそうなステージを、目の当たりにした全員が――これがランクSなのだと、思い知る。
 最上の才能と希有な幸運、さらに命がけの鍛錬をして到達できる境地に、今雪歩がいるのだと皆が納得する。

ブログライト雪歩

 ホストである伊織でさえも、ため息をつく。

「雪歩……凄まじいアイドルになったわね。どれほどのものを犠牲にしてきたのか……想像するだけで、嫌になるほどに」

 千早も驚いた。
 千早の知る雪歩は、生来の引っ込み思案で、アイドルとして、二歩も三歩も遅れを取る少女だったのだ。
 だが今、目の前にいる雪歩は、飢狼のような貪欲さを持ち、虎のように圧倒的な力を持っているかのようだった。
 千早が世界中で目にしてきた、典型的なティーンが支持する歌姫に分類できた。

 3曲歌うと、雪歩が深々と頭を下げ、緞帳が降りる。
 ショーに贈られる賛辞と拍手は、会場全員、76人から発したとは思えないほど、苛烈で濃厚なものであった。

「驚いたわ。さすがランクSね。水瀬さんは、今でも萩原さんとお付き合いがあるのね」

 千早が感心したような顔をすると、伊織は否定するかのように肩をすくめる。

「いいえ。雪歩は別。わたしがいくら765プロを出たとはいえ、961プロの人間と仲良くするなんてないわ。わたしがやよいにだけ、『千早が今日来る』っていったの。そしたら、どういうわけか雪歩の方から連絡があり、『今日のパーティで唄わせて欲しい』って云いだしたのよ!」
 
「え? どういうこと、なのかしら?」

 千早も動揺していると、部屋がノックされる。
 開くとステージを終えたばかりの、衣装姿の雪歩がそこにいた。
 雪歩はステージ上の時と同様、燃えるような眼差しをもって千早を見た。

「千早ちゃん! まずは新曲プロデュースの成功おめでとう!」

「え、ええ、萩原さん、ありがとうございます。あ、あの今、拝見しましたけど、凄いステージでした。圧倒されました」

 すると刹那、雪歩は憎悪をたぎらせたような目を千早にしてみせる。

「……そんな、3年前の千早ちゃんなんかに比べたら、まだまだだよ。でもね、あの最高潮だった千早ちゃんに、勝てないまでも、負けない努力をわたしは続けているよ!」

「わ、わたしは、自分がどうだったか、憶えていないから……」

 突然雪歩は千早の手を取り、ギュッと握る。

「千早ちゃん、わたし、待っているわ。アイドルとしての復帰を!! わたし、そのために頑張ってきたんだもん! 世界最強のアイドル、如月千早を倒すために、961プロに移って、プロデューサーさんを、高木社長を裏切って、頑張ってきたんだよ!」

「は、萩原さん!?」

 不意に雪歩の怒ったように膨らませた瞳に、涙が浮かぶ。

「千早ちゃんが765プロを震撼させて、示した理想は確かに正しかった。だから認めて、わたしは自分のやり方で千早ちゃんを越えるって決めたんだもん!! だからお願い! わたしと闘って!!」

 そういうと、雪歩は現われたときと同じスピードで去っていった。
 千早は、何を雪歩に云われたのかわからず、完全に惚けてしまう。
 どうして雪歩に挑戦状を送られるのか、心当たりがまるでなかったのだ。
 伊織は千早の横に立ち、しみじみとした声を発する。

「そうか……雪歩が961に行った理由はそういうことだったのね」

「わかるの? 水瀬さん」

「うん……あんたは日本にいなかったからわからなかったでしょうけど、あんたの頑張りは、765プロアイドルの起爆剤になり、大きな活動の原動力となったの。アイドル同士、互いをライバルと見なすようになり、仲の良かったわたし達も、ちょっと距離が空いたのよね」

「そんなことが……」

「そういう少しギスギスした空気を、一番嫌ったのが雪歩だったわ。だから誰かの誕生日になると、率先して集まろうって言いはったの。765プロの絆を昔のようにしたがっていたわ。でも……あんたがビルボードの14位を取ってから、雪歩も態度を変えたわ。レッスンにのめり込み、引っ込み思案を返上して、強い積極性を見せるようになったの。961プロに移ったのもその一環ね」

「ああ……」

 千早には雪歩の真情が、ある程度理解できた。
 自分の巻き起こした熱気の煽りで、雪歩の人生を多少なりとも翻弄したことになってしまったのだ、と。
 ランクアップに仲間が血眼になった765プロで、雪歩は迷ったあげく、闘う道を選んだのだ。
 千早はすまないと心の中で思った。
 今の今まで知らなかったが、自分の生み出した影響の大きさに、びっくりさせられたのだ。
 また千早はもう一つ、雪歩に謝らなくてはならないことができたのもわかった。
 雪歩がどうであろうと、もう自分がアイドルとして闘えないことが確信できたのだ。
 彼に美味しい料理を作ってあげる以上の情熱をもって、唄い踊ることは、もう千早には考えられなくなっていた。


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プロフィール

月の輪P

Author:月の輪P
IM@Sブームから完全に出遅れたPです。
アイマスのニコニコもよく観ています。正直SSも初めてです。イラストは完全に素人なので、基本無視してください。
感想、アドバイスなんでもコメントください。リクエストも受け付けます(千早以外でもいいです)。
また如月千早を愛する者のリンクは随時受け付けます!

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